職員研修用資料(OJT:統合失調症の特性理解と支援の基本について)

統合失調症は、考えや気持ち、周囲の状況を整理することが難しくなり、行動や人間関係、日常生活などに影響が生じることがある精神疾患です。
発症の原因は完全には解明されていません。決して珍しい病気ではなく、100人に1人弱がかかるとされています。
また、統合失調症と診断されていても、症状の種類や程度、生活上の困りごとは一人ひとり異なります。「統合失調症だからこのような人」と決めつけず、本人の状態や特性を個別に確認することが大切です。

① 統合失調症にみられる主な症状
統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能の障害」などに分けて考えることができます。
陽性症状
健康なときにはなかった体験が現れる症状です。
幻 覚
実際には存在しない声や音などを、本人が実際に存在するものとして感じることがあります。
特に、周囲の人には聞こえない声が聞こえる「幻聴」がみられることがあります。
妄 想
周囲から見ると事実とは考えにくい内容であっても、本人には確かなこととして感じられることがあります。
例えば、
- 誰かに監視されている
- 悪口を言われている
- 周囲の出来事がすべて自分に関係している
などと感じる場合があります。
本人にとっては実際に体験しているように感じられているため、単純に「そんなことはない」と否定しただけでは、不安や混乱が解消されないことがあります。
陰性症状
以前みられていた活動性や感情表現などが低下する症状です。
例えば、
- 物事に取り組むことが難しくなる
- 活動量が少なくなる
- 人との交流が少なくなる
- 感情が表情に出にくくなる
- 日常生活上の行動を始めることが難しくなる
などがあります。
こうした状態を、職員が「やる気がない」「怠けている」と判断してしまわないことが重要です。症状の影響が関係している可能性も考える必要があります。
認知機能の障害
統合失調症では、注意、記憶、判断、情報整理などの認知機能に影響が生じることがあります。
例えば、
- 一度に多くのことを言われると整理できない
- 作業手順を覚えることが難しい
- 集中を長く続けることが難しい
- 優先順位を決めることが難しい
- 急な変更への対応が難しい
- 相手の話を整理して理解することが難しい
など、日常生活や仕事の場面に影響する場合があります。

② 症状だけで本人を判断しない
統合失調症という診断名が同じでも、得意なこと、苦手なこと、必要な支援は異なります。
「統合失調症だから難しいだろう」と最初から作業機会を制限するのではなく、本人の実際の能力や希望、状態を確認しながら支援します。

③ 本人の体験を頭ごなしに否定しない
本人が幻聴や妄想と思われる体験について話した場合、その内容について職員が事実だと認める必要はありません。
一方で、
「そんなことは絶対にない」
「考えすぎです」
「おかしなことを言わないでください」
などと強く否定すると、本人との信頼関係を損なう可能性があります。
まず本人が不安や困りごとを感じていることを確認し、落ち着いて話を聞きます。
支援者は、本人の体験そのものと客観的な事実を区別しながら対応することが重要です。

④ 普段と違う変化に気づく
日常的に関わる職員だからこそ、
- 本人から「声が聞こえる」などの訴えが増えた
- 強い不安を訴えている
- 作業や会話がいつもより難しくなっている
- 睡眠について本人から変化の訴えがある
- 普段と大きく異なる言動がみられる
などの変化に気づくことがあります。
このような場合でも、職員が病状を診断することはできません。
確認した事実と本人から聞いた内容を分けて記録し、事業所内で情報共有したうえで、個別支援計画や本人との取り決め等に沿って、必要に応じて相談支援専門員、家族、医療機関などとの連携を検討します。

⑤ 避けたい関わり方
「統合失調症だから」と決めつける
診断名だけから、本人の性格や能力、行動を判断してはいけません。
「やる気がない」と判断する
意欲低下や活動性の低下など、症状の影響が関係している可能性があります。
幻覚や妄想と思われる内容について議論する
本人を説得しようとして長時間議論するより、本人が何に困っているのかを確認することが重要です。
一度にたくさんの指示を出す
情報量を減らし、一つずつ具体的に伝えることを検討します。
本人の話をすべて病気の症状として扱う
本人が実際に困っていることや、現実に起きている問題まで「病気だから」と判断しないよう注意する必要があります。

⑥ 支援で最も重要なこと
統合失調症について学ぶ目的は、症状だけを覚えることではありません。
重要なのは、
「この人は統合失調症だからこうする」
ではなく、
「この人は今、何に困っているのか」
「どのような伝え方なら分かりやすいのか」
「どのような環境なら作業に参加しやすいのか」
を考えることです。
本人のできない部分だけを見るのではなく、本人ができることや得意なことを確認し、その力を生かせる環境を整えることが支援につながります。
参考資料
- 厚生労働省「障害者差別解消法 福祉事業者向けガイドライン」
- 厚生労働省「精神障害(精神疾患)の特性(代表例)」
- 厚生労働省「こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」
- 厚生労働省「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
- 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)関連資料
※本記事は職員研修を目的とした一般的な情報です。統合失調症の症状や経過、必要な支援は一人ひとり異なります。具体的な支援については、本人の意向や個別支援計画、医療・相談支援等から得られている情報を踏まえて検討します。
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