職員研修用資料(OJT:双極性障害の特性理解と支援の基本について)
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【双極性障害を理解し、支援に生かすために】
双極性障害(双極症)は、気分や活動性が大きく高まる「躁状態・軽躁状態」と、気分や意欲などが低下する「うつ状態」がみられる精神疾患です。
誰にでも気分の変化はありますが、双極性障害では、その変化が大きくなり、生活や仕事、人間関係などに影響することがあります。
就労支援の現場では、診断名だけから本人の状態を決めつけるのではなく、普段の本人と比べてどのような変化があるのかを確認し、その時の状態に応じて支援することが重要です。

① 躁状態・軽躁状態について
躁状態や軽躁状態では、気分が高揚したり、活動量が増えたりすることがあります。
例えば、
- 睡眠時間が少なくても活動している
- 話す量が増える
- 話す速度が速くなる
- 次々と新しいことを始める
- アイデアが次々と浮かぶ
- 自信が非常に強くなる
- 作業量が急に増える
- 注意がそれやすくなる
- イライラしやすくなる
などの変化がみられることがあります。
ただし、これらの様子が一つ見られただけで、職員が「躁状態である」と判断することはできません。
支援者が確認するべきなのは、
「いつもの本人と比べて、どのような変化があるのか」
という点です。

② うつ状態とは
うつ状態では、
- 気分が落ち込む
- 興味や楽しみを感じにくくなる
- 疲れやすくなる
- 考えがまとまりにくくなる
- 判断や作業に時間がかかる
- 睡眠や食欲に変化がみられる
など、さまざまな症状が現れることがあります。
外から見ると「何もしていない」「やる気がない」ように見える場合がありますが、症状によって活動すること自体が難しくなっている可能性があります。
本人の状態を確認せず、努力不足や性格の問題として判断してはいけません。

③ 就労支援で確認したいこと
支援現場では、診断名よりも日々の変化を確認します。
例えば、
- 通所時間や欠席の変化
- 睡眠についての本人からの訴え
- 作業量の急な増減
- 話す量や速度の変化
- 複数の作業を次々始めるようになっていないか
- 作業上の判断や確認の変化
- 疲労についての訴え
- 本人が困っていること
などです。
一つの行動だけで判断せず、本人への確認と日々の記録を積み重ねることが重要です。

④ 躁・軽躁が疑われる変化があるときの関わり
活動量が増えているからといって、単純に仕事を増やすことは適切とは限りません。
本人が「もっとできる」と話していても、
- 作業量を急激に増やさない
- 複数の作業を同時に抱えすぎないよう整理する
- 重要な判断を急がせない
- 本人と現在の睡眠や生活状況を確認する
- 普段との違いを職員間で共有する
などの対応を検討します。
本人の勢いを強く否定したり、職員が言い負かそうとしたりするのではなく、具体的な事実を確認しながら関わります。

⑤ うつ状態がみられるときの関わり
活動が難しくなっている場合には、
- 作業量や工程を調整する
- 一度に多くの指示を出さない
- 必要に応じて休憩を取りやすくする
- 本人の訴えを確認する
- 「頑張ればできる」と無理に励まさない
など、その時の状態に合わせた支援を検討します。
本人ができていないことを責めるのではなく、現在できる範囲を確認することが大切です。

⑥ 避けたい関わり方
「今日は元気だから大丈夫」と決めつける
活動量が増えていることが、必ずしも状態の安定を意味するとは限りません。
「やる気がない」と判断する
うつ状態では、本人の意思とは別に活動することが難しくなる場合があります。
診断名だけで行動を決めつける
「双極性障害だから躁状態だろう」と考えるのではなく、実際に確認できた本人の様子や本人からの訴えをもとに支援します。
職員だけで治療を判断する
薬の変更や治療について判断するのは医療機関です。支援者は、確認できた変化を記録し、必要に応じて本人と相談しながら医療機関や関係機関との連携を検討します。

⑦ 「死にたい」などの訴えがあった場合
双極性障害のうつ状態では、自殺について注意が必要になる場合があります。
本人から、
「死にたい」
「消えたい」
「生きていたくない」
などの訴えがあった場合、それを軽く扱ったり、「そんなことを言ってはいけない」と否定したりせず、内容を確認します。
緊急性が考えられる場合には、一人の職員だけで対応せず、安全の確保を優先し、事業所の緊急時対応に沿って管理者や医療機関等につなげます。

⑧ 支援で最も重要なこと
双極性障害について学ぶ目的は、
「躁状態ならこうする」
「うつ状態ならこうする」
という対応を機械的に覚えることではありません。
重要なのは、
「普段の本人と何が違うのか」
「本人は今、何に困っているのか」
「現在の状態で無理なく参加できる作業は何か」
を確認することです。
診断名から本人を決めつけず、本人の状態や希望を確認し、必要な環境調整を行うことが支援につながります。
また、支援者が治療や診断を行うのではありません。
日々の変化を具体的に把握し、記録し、必要な場合には本人と相談しながら医療や関係機関へつなぐことが、福祉事業所に求められる重要な役割です。
参考資料
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト 双極性障害(躁うつ病)」
- 厚生労働省「こころの耳 双極性障害(躁うつ病)」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」
※本記事は職員研修を目的とした一般的な情報です。双極性障害の症状や経過、状態の変化、必要な支援は一人ひとり異なります。具体的な支援については、本人の意向や個別支援計画、日々の状況、医療機関・相談支援事業所等から得られている情報を踏まえて検討します。また、診断や治療については医療機関の判断に基づき、支援者が独自に判断しないようにします。
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